読書メモ3~あなたの身近に億万長者はいる
大江英樹「となりの億り人 サラリーマンでも『資産1億円』」(朝日新書)2021.12初版
野村総合研究所の推計(2023年3月発表)によれば、純金融資産(世帯として保有する金融資産の合計額からローンなどの負債額を差し引いた金額)が1億円以上ある富裕層は、149万世帯(一般世帯の2.6%)もあるという。
「100人の世帯主がいれば2~3人は億万長者」というと、意外に身近に億万長者はいるのだな、という印象ではないだろうか?
本書は、こうした億万長者=億り人を取り上げ、著者である大江氏が実際に接してきた億り人たちの思考や行動について紹介したものである。
大江氏はそれらを元に、一定の努力さえ厭わなければ、億万長者になることは誰でも再現可能なものと結論づけている。
大江氏が繰り返し強調しているのは、億万長者の多くはいたって普通の生活を送っている人々だ、ということだ。
億万長者といえば、豪邸に住み、外車を乗り回し、高級ブランドを身に着け、高級レストランで飲食し、セレブが集まるパーティに参加している、といったイメージだろうか?
そして、彼らは株、仮想通貨、不動産などの投資の成功で巨万の富を築いたに違いない、と考えている人も少なくないだろう。
しかし、そういう派手な生活を送る億万長者はごく少数にすぎず、大半はあなたの隣にひっそりと目立たずに住んでいるような人々なのである。
普通のサラリーマンで、億単位の資産をもちながらも会社勤務を続けている人も珍しくない。
資産運用には長年取り組んでいる人がほとんどであるが、それのみで1億円の財産を築けた人はきわめて例外的だという。
働いて稼いだ収入から相当な額を継続的に貯蓄に回し、溜まった資金から余裕のある範囲で運用しているのだ。
しかも、売った買ったを繰り返すトレードではなく、何年も、場合によっては何十年もかけて保有する長期投資を基本している人が多数派だ。
資産を増やす上で最も重要なことは、投資ノウハウなどではなく、限られた収入の中から貯蓄に回す資金を捻出する“強い意思”である。
生活費を使った余りを貯蓄するのではなく、給与天引きなどの方法で、使う前に貯蓄する分を確保していることが特徴だという。
そのために、支出に関して、自分にとっての優先順位を明確にもっていることが、億り人の共通する特性である。
自分がこだわりたい分野にお金を使うことは躊躇しないが、重視しないことであれば、支出は最小限に抑えようとする。
特に、他人との比較によって価値が生まれる「地位財」を購入することには、あまり興味がない。
贅沢品を購入して他人に自慢することなど、自分の人生にとって意味がないと考えている。
筆者の経験からいっても、資産を増やすための王道は「無駄なことに使わない」だと思う。
「そんなの、当たり前だろ! それができるなら苦労はしない」と怒る方もいらしゃるだろうが、実感だから仕方ない。
もちろん、転職などによって収入を増やすことができれば、なおよいだろうが、誰でもできることではないし、運にも左右される。
しかし、支出は自分の意思でずっとコントロールできる。
運用で増やすのは、その次の段階だろう。
「私はこうやって1億円の資産を築いた」という趣旨の本はよく見掛けるが、その多くは投資、しかもトレードを主体にしたものである。
だが、書いてある通りやったとしても、再び同じことが起こる可能性は乏しい。
真似するのはやめておいたほうがよい。
本書を参考に、自分の金銭収支や価値観を改めることこそ、億万長者への近道だと思う。