成長源は目薬だけじゃない!~ロート製薬

経営戦略探訪

ロート製薬は、今年で創業125周年を迎える老舗企業である。
同社のイメージといえば、ほとんどの人は「目薬の会社」と答えるのではないだろうか?
実際に、国内で市販される目薬の販売金額全体に占める同社のシェアは46%(インテージSRIによる)にも及ぶから、そのイメージは間違ってはいない。

しかし、目薬を含むアイケア関連製品・サービスの売上高は同社連結売上高の20%程度でしかない、という事実を知らされると、驚く人も多いだろう。
実のところ、筆者もその一人だった。

稼ぎ頭はスキンケア関連

ロート製薬は創業当初は胃腸薬を製造販売していた。
「パンシロン」というブランドになり、現在でも消費者に親しまれている。

目薬をつくり始めたのは創業10年目の1909年で、社名の由来にもなっている「ロート目薬」を発売した。
きっかけは目の伝染病であるトラホーム(トラコーマ)の流行だったという。
これが主力製品として成長したわけで、現在の「Vロート」や「Cキューブ」といった商品は、読者にも日頃愛用しておられる方がいることだろう。

スキンケア分野への進出の最初は、1975年米国メンソレータム社からブランドの使用権を得て、皮膚薬などを発売したことである。
1988年にはメンソレータム社本体を買収し、海外100カ国以上に広がるネットワークを獲得。
これを足掛かりに、アジアを中心にグローバルな事業展開を推進するようになった。

スキンケアへの進出を加速化させたのは2000年代に入ってからで、「オバジ」「肌ラボ」「メラノCC」など同社を代表するスキンケアブランドが生まれた。

医薬品メーカーとしての研究開発力を生かした機能性化粧品が主体で、販路はドラッグストア・スーパーマーケット・コンビニなど、若年層でも買いやすい比較的安価な価格で販売する、といったビジネスモデルで化粧品メーカーとは差別化している。

スキンケア関連の売上高は急速に拡大し、現在ではアイケア関連の3倍以上、連結売上高全体の65%を占めるまでに成長している。

出典:ロート製薬「統合レポート2023」

こうやってみると、ロート製薬はロングセラーブランドを育てるのがうまい会社、という印象を受ける。
目先の流行を追うのではなく、じっくり腰を据えて中長期的なスパンで事業を育てようとしていると感じる。

業績絶好調で成長は継続中

125年の老舗企業でありながら成長企業でもある、ということがロート製薬の特色である。
下図をみてもわかるように、売上高は長期にわたって増え続けている。

出典:ロート製薬公式IRサイト

コロナ禍で一旦は売上高の減少があったものの、2022/3期以降は急増している。

高成長を牽引するのは、大黒柱となったスキンケア関連である。
アイケア関連も堅調ではあるが、スキンケア関連の売上高の伸びがさらに著しい。

地域的には国内とアジアの売上高が大きく伸びている。

国内では、コロナ後の消費増加の影響もあり、「メラノCC」や「肌ラボ」などスキンケア用品の販売がドラッグストアなどで好調に推移している。

なんと、ロート製薬は今や基礎化粧品の売上No.1メーカーになっているそうだ。
さらに、インバウンド需要の盛り上がりで、基礎化粧品や目薬が人気になっていることも大きい。

アジアでは、中国の回復がやや遅れているものの、香港、台湾、インドネシアなどが現地通貨ベースで2ケタ成長している。

アメリカやヨーロッパも、売上規模こそまだ小さいながら、やはり2ケタ成長をしている。

現状では死角はほとんどなく、当分は成長が続きそうな勢いである。

老舗だけど先進的!?

ロート製薬の魅力の一つは、老舗企業にも関わらず時代の動きに敏感で、先進的な取り組みに積極的であることだ。

将来的な事業の柱に育てるべく先行投資として取り組んでいるのが、「再生医療」と「開発製造受託(CDMO)」である。
どちらも医療関連で成長が有望な領域なので、成果が期待される。

また、経営理念である“Well-beingな社会の実現”を実践する一つとして、社員のWell-beingを実現するために、社外での副業や社内起業を後押しする制度を整備している。
今でこそ、社員の副業を認める会社は珍しくなくなったが、同社が制度をつくったのは2016年とかなり早い時期である。
いや現在でも、単に副業を認めるだけにとどまらず、制度的にサポートしようという企業はそれほど多くないのではないか?

そうそう、株主に対してもWell-beingは向けられているようだ。
同社の株式配当金は、2025/3期で21期連続の増配とする予定である。

長期投資先としても魅力的なようだ。

ロート製薬

Posted by Uranus