読書メモ1~会社四季報を使いこなす秘訣とは?

投資のヒント,雑記帳

山本隆行「伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい」(東洋経済新報社)2022.6初版

本書では、会社四季報の元編集長である著者が、会社四季報を使って有望株を見つけるノウハウをレクチャーしてくれる。
お宝株や大化け株となる候補を探すためのノウハウが満載だ。

どちらかというと、一度購入したら何年も保有する長期投資ではなく、数週間から数ヵ月で値上がりしそうな株を探す中期投資向けの内容だといえる。

具体的な個々のノウハウは本書を読んでもらうとして、そのエッセンスを簡潔にまとめれば、「顕在化しつつある変化を探せ」ということだろう。
その変化が市場にとってサプライズ(=株価に反映されていない)であれば、なおよい。

たとえば、第13章「年収の変化は一大ヒントなのだ」では、従業員の平均年収が急増していることは成長企業の特徴の一つであることが、複数の事例を挙げて説明されている。
投資家は、人件費が増えることはコスト増につながるネガティブ要因だと捉えがちだが、平均年収の急増は投資のチャンスかもしれないのだ。
会社四季報からこうした変化が読み取れるかどうかが、投資の巧拙を分けることにつながるという。

増収増益の決算なのに株価が下落してしまうことは往々にして起こるが、これも「変化」という観点からみることで説明できる。
増収増益自体はすでに株価に織り込まれていて、その変化が投資家の期待した水準に達しているかどうかが問題だったのだ。
期待を上回ればサプライズで株価は上昇するが、期待に達していないと失望売りを招くという結果になる。
単純に業績結果の数字だけをみて売買するのではなく、株価がどのような数字を想定して形成されているかを意識しないといけない、ということなのである。

PERの使い方については、“PERが低い=割安株で買い”という考え方は大間違いだ、という。
PERが低いということは、市場の期待度が低いということの裏返しでもある。
市場参加者から注目されなければ、株価が上昇することは難しい。
2つある銘柄からどうしても選ばなければならないとしたら、むしろ期待度が高いPERの高いほうを選んだほうが有望だと考えるべきだ。

もちろん、PERが低い銘柄でも長期的に継続して業績向上していくなら、いずれ市場の期待が高まって株価が上昇する可能性は十分ある。
だが、それには相当な時間を要することとなろう。
数ヵ月で実績を上げようとするなら、やはり現時点でPERが高いほうが有利だといえる。

このように、本書を読むことで中期投資に役立つ考え方が身につく。
むろん、それだけですぐに結果を残せるようになるほど、個別株投資は甘くない。
とはいえ、日々の株価の動きを理解しやすくなることは間違いないので、税別1600円なら十分読む価値があると思う。

「著者が元編集長ならでは」の特徴といえるのが、年間4冊発行される会社四季報の各号の違いを説明してくれる第1章から第3章だ。
1冊だけ買うとすれば、著者のおすすめは9月に発売される秋号だという。
理由は、四季報独自の予想が増えて、株価に織り込まれていない業績の上方修正予備軍を一番見つけやすいからだそうだ。

さっそく来月購入して楽しみたい。

Posted by Uranus