長期投資における増配継続銘柄の魅力

投資のヒント

日経マネー2021年5月号で、「さわかみファンド」の創設者澤上篤人氏が、最近はやりの「投資で早期にリタイアする」という考え方(FIREというらしい)に警鐘を鳴らしている。

現役世代が株式の配当金だけで生活していこうとすれば、最低でも3億円は欲しい、澤上氏は言う。
3億円に、東証1部上場企業平均の予想配当利回り年1.8%を掛けて配当額を算出すると、税引き後の手取りで約430万円になるが、それでも生活は楽ではないだろう、とおっしゃっている。
仮に、今の株高傾向がずっと続いたとしても、それだけの金融資産を一朝一夕に築くのは困難だから、安易に考えるべきではないというのだ。

実際には株安に転じる時期が必ず来るから、そこで焦って投資リスクを取りすぎ、かえって財産を失うことになるおそれがある。

取得原価ベースの配当利回りは上昇する可能性あり

筆者は、澤上氏の主張に概ね同意するが、必要な資産3億円の計算方法には疑問を感じている。
なぜなら、長期投資を前提とするのであれば、配当利回りは取得原価をベースに考えるべきだからである。

長期にわたって成長を続ける優良企業の株式を保有している場合、中長期的に株価は上昇することが多い。
そして、配当額も利益の増加とともに増えていくケースがほとんどである。
つまり、時価に対する配当利回りはそんなに変わらなくても、取得原価ベースでの配当利回りは大きく上昇していくことが少なくない。

どんなに株価が上昇しても、取得原価は確定している(買い増しがない場合)。
だとすれば、銘柄選択を誤らなければ、現在の配当利回りよりも高い配当利回りで、必要資産額を計算することができるはずだ。

継続的に増配を続けられる企業の株式を選ぶことは、FIREへの近道になるということである。

実例~アルプス技研

実例をみてみよう。
現在、筆者の保有株の中で、取得原価ベースの配当利回りが最も高いのは、技術者派遣会社のアルプス技研である。
年配当利回りは、なんと21.3%!

もちろん、最初からこんなに高配当利回りであったわけではない。
この銘柄を購入したのは、投資を始めた最初期の2009年1月である。
なんで購入したのか、今となっては思い出せないのだが、配当利回りは3%足らずだったと思う。

当時はリーマンショックの直後で、アルプス技研の業績はあまり良くなかった。
その後も東日本大震災の影響などもあり、株価は低空飛行を続けていた。
何度も売り払おうと考えたが、なぜか売りそびれているうちに、アベノミクス開始以降の景気回復の波に乗り、業績が伸長してきた。

2013年度から急激に配当額が増加していることが、下記グラフからもわかる。
その後はハイペースで増配が続き、気がついたら配当額は購入当時の8倍以上になっていた、というわけだ。

他にも、取得原価ベースの年配当利回りが10%を超えている保有銘柄が複数ある。
いずれも、保有期間が5年以上と長いのが共通点だ。

このように、長期投資の醍醐味の一つが、増配の継続による配当利回りの向上というインカムゲインにあることは間違いない。
もちろん、こうした企業は株価自体も大幅に上昇することが多く、キャピタルゲインの面でも期待できる。
実際、アルプス技研では、現在の株価が筆者の取得原価の約6倍となっている。

日本株は配当面では魅力がない、とかつては言われていた。
しかし、近年は株主還元に対する企業意識もポジティブになり、増配に意欲を示す企業が少なくない。
持続的に成長できる企業なら、長期保有で配当をもらい続けることが非常に魅力的な選択肢だ、とおわかりいただけると思う。