ファンドマネージャー対談を読む

投資のヒント

筆者にとって、中小型株投資主体のファンドマネージャーのお話は、個別株投資の実践に役立つヒントが得られることが多い。

最近も、SBI証券の投資信託サイトに掲載された、3回にわたるファンドマネージャー対談企画を読んでみて、どれも非常に参考になった。
ひふみ投信シリーズを運用するレオス・キャピタルワークスの藤野英人氏らが、他の3社のファンドマネージャーたちと対談する企画だ。

筆者が特に面白く読んだのは、第1回の藤野氏と三井住友DSアセットマネジメント・木村忠央氏の対談である。
木村氏は、筆者も保有する投資信託「三井住友・中小型株ファンド」のファンドマネージャーで、長らく国内中小型株の運用に携わってきた人だ。
同ファンドは設定日が2003年9月30日というから、もう18年近い運用実績になる。

木村氏が一番気をつけているのは、「短期的な相場動向に左右されないようにしよう」ということだという。
なぜなら、相場動向に合わせて運用方針をコロコロ変えることが失敗の元だからである。

ファンドマネージャーは、社内や顧客から「パフォーマンスが悪い、どうやって改善しますか?」と責め立てられることが多い。
すぐにパフォーマンスを改善して結果を出そうとすれば、相場動向にそった運用するしかない。
でも、それをやりだすとコロコロ変わる相場に合わせて自分の運用方針も変えなくてはならないため、やがて運用に失敗し、業界からいなくなったファンドマネージャーを木村氏はたくさん見てきたそうだ。

それを受けて、藤野氏も「相場を見て投資しているファンドマネージャーで、長く続く人はあまりいないんですよ。調子がいいときにはいいんだけれど、マーケットには必ず浮き沈みがあるので、沈んだ時にマーケット以上に大きな打撃をうけて結果的にいなくなってしまう。」と述べている。

これは、まさに個人投資家が陥りやすい典型的な失敗パターンではないだろうか?
日経平均の動きとか、いま市場で囃し立てられているテーマとか、爆上がりしている株は何かなど相場動向ばかりが気になって、自分なりの明確な投資運用方針がない。
昨年後半のような上げ相場のときには調子よくいってご満悦だが、ちょっと相場動向が厳しくなると、慌てて売り買いして、かえって大きな損を被ってしまう。

お二人は長期保有を基本とする運用方針を貫いておられるが、藤野氏によれば、それは長期で持てば必ず値上がりするからではなく、長期投資によってマーケットの動きが中立化され、株価が企業価値を反映しやすくなるからだという。
しっかりと業績を伸ばし続けられる企業を選んで長期投資をすれば、成功する可能性が高まるだろうということなのだ。

もちろん、投資に正解はないので、マーケットの動向を見ながら機敏に反応するやり方も有力な手法である。
ただ、かなりの瞬発力や思い切った損切りなどの決断力が必要とされることは間違いないので、誰でも成功できるやり方でもないだろう。

結局、自分の能力や性格に合った投資の手法を見つけて、それを愚直に実践するしかないのだと思う。

もう一つ印象に残ったのが、「相場の浮き沈みはあるけれども、その流れの中で中小型株はずっと高成長を続けて来ることができたと思います。だから高齢化が進んで超成熟している日本社会の中でこそ、中小型株は魅力があるんです。」という木村氏の言葉だ。

我が国は成熟社会なのでもう高成長は期待できない、だから日本株に投資しても満足いく成果は得られない、と主張する人はよく見かける。
しかし、それは大企業が成熟化してしまったということであって、新たに飛躍する中堅中小企業はいくらでも存在する。
TOPIXのような大企業中心の株価指数に投資しても高いリターンは得られないかもしれないが、中小型株には十分チャンスがある。

とかく「中小型株は値動きが大きくて短期売買向き」と言われがちだが、実は長期投資の対象としても魅力が高い、という熱い思いがお二人の対談から伝わってきた。

Posted by Uranus