損切りできない人に贈る魔法の言葉

投資のヒント

株式投資の秘訣について、達人たちが口を揃えて言うことは、損切りの大切さである。
だが、これを現実には実践できていない個人投資家は、意外と多いのではないだろうか。
かくいう私も、その一人だ。

値上がりを見込んで何らかの個別銘柄を購入したが、思惑が外れて値下がりしてしまった。
本当は失敗を認めてすぐに損切りするべきことはわかっていながら、なかなか踏み切れない。
「もうすぐ反転するはず」とか、「市場が過剰反応しているだけ」とか、何かと理由をつけてズルズルと先に延ばしてしまう。
自分の誤りを認めて、損失を確定するのが嫌なのだ。

「株式投資の銘柄」は手段に過ぎない

そんなとき、筆者は自分にこう問いかけるようにしている。

株式投資の本来の目的は何だったのか?
言うまでもなく、資産を増やすことにほかならない。
ある個別銘柄を保有したのはそのための手段であって、保有自体が目的ではなかったはずだ。

ひょっとしたら、急速に値を戻して、含み損は解消されるかもしれない。
でも、損を取り戻すのに、その銘柄でなければならない理由はあるのか?

資産を増やすという目的を実現できるなら、どんな銘柄であってもよい。
購入したときにはその銘柄がベストだと思っていたとしても、現時点で客観的に判断してよりよい選択肢があるのなら、別のもっとよい銘柄に乗り換えるべきである。

今、その銘柄の保有を続けることが本当にベストな選択肢といえるのか?

埋没費用に囚われずに判断しよう

経済学には、「埋没費用」という概念がある。
プロジェクトなどへの投資にあたって、すでに支払ってしまって回収不能な費用のことを指す。

例えば、チケットを購入して映画を観に行ったが、つまらない内容だったとする。
そこで、どのような行動を取るべきか?
映画を観ようが観まいが、チケット代はもう戻ってこない。
つまり、埋没費用だ。
だったら、つまらない映画に時間を使うのではなく、さっさと別の場所へ移動して楽しく過ごすほうが、得られる便益は大きいはずだ。

だが、現実には、チケット代がもったいないと、我慢して映画を見続ける人が結構多いように思う。
経済合理性からみれば、それは間違った選択なのだ。

株式の個別銘柄投資はどうだろう?
購入費用がもったいないからと値上がりを待ち続けるのは、苦痛を感じながらつまらない映画を見続けることと似ていないか。
損切りして、さっさと別の銘柄に乗り換えてしまうことが、心安らかな時間を過ごせることになるのではないだろうか。

そのことにいち早く気づき、行動の心理的制限を取り払うことができた者が、株式投資で成功するのだろう。

Posted by Uranus