「おおぶねJAPAN」の組入銘柄をみる

投資のヒント

以前、投資信託の月次レポートが役に立つという記事を掲載したが、その中で農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)を紹介した。
「売る必要のない会社しか買わない」という運用哲学の下に、その代表的なファンドである「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」では、米国株を対象に、<付加価値の高い産業><圧倒的な競争優位性><長期的な潮流>の3つの基準を満たす、持続可能なキャッシュ・フロー創出能力を有する「構造的に強靭な企業」に長期厳選投資を行っている。

そんなNVICが日本株を投資対象にした投資信託を2019年12月に立ち上げた。
「農林中金<パートナーズ>おおぶねJAPAN(日本選抜)」だ。
同社の運用責任者である奥野一成氏は、以前に「残念ながら日本株には魅力的な企業が少ない」と語っていただけに、どのような企業に投資するのか、筆者はずっと関心を持っていた。

2020年12月15日に初めての決算日を迎え、ようやく先月に運用報告書が投信のサイトにアップロードされたので、さっそくダウンロードして読んでみた。

この第1期の成績は、基準価額が13.9%の上昇と、TOPIX(配当込み)指数の5.2%を大きく上回る水準だった。
もっとも、同期間の日経平均の騰落率が12.1%の上昇だから、それほどずば抜けて高いわけでもないが、スタートとしてはまずまず良好だったと評価してよいだろう。

さて、肝心の組入銘柄だが、決算日時点で81社である。
この81社が、現時点で彼らのお眼鏡にかなった「構造的に強靭な企業」ということになる。
何社か例外はあるが、大半の銘柄は140~170億円の評価額となっており、基本的には各銘柄に同ウェイトで投資する方針のようだ。

組入銘柄をみて、筆者が注目したのは以下の4点である。

まず第1に、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、ファーストリテイリングといった、時価総額が大きく市場を代表する銘柄が入っていない。
意識的に避けたのか、そもそもNVICの選別基準に当てはまらなかったのかはわからないが、何れにせよ大きな特徴といえるだろう。
当然、日経平均との連動性は薄まると推測される。

とはいうものの、第2に、組入銘柄はいずれも「やっぱり、そうだよな」と納得する超優良企業だといえる。
「個別株投資を始めたいけど、何を買えばいいか」と聞かれれば、この中から選んでおけば間違いない、と自信をもって勧められる。
また、一般的には知名度が低い企業も含まれており、銘柄研究の候補探しにも使えそうだ。
ユー・エス・エスあたりは、かなり株式市場に詳しい人でないと、名前すら聞いたことがないだろう。
同社については、ファンドの2020年10月の月次レポートで詳しく紹介されている。

第3に、ファンドの業種別構成が、東証第1部の時価総額構成とはかなり異なる。
例えば、東証第1部では7.4%しかない化学の比率が、15.2%と2倍以上もある。
反対に、東証第1部では電気機器に次ぐ11.2%と二番目に大きい情報通信が、このファンドでは6.3%、わずか2社しかない。
おそらく、彼らが投資対象とする「構造的に強靭な企業」は化学に多く、情報通信には少ないということなのだろう。

第4に、銘柄の入替えが非常に少ない。
期間中に全売却したのは日本たばこ産業1社だけ、新規投資は三菱地所とベネフィット・ワンの2社だけである。
これは、このファンドの投資運用方針として、ポートフォリオ組成後は機械的なリバランスを⾏うのみで、⼀般的なアクティブファンドのようなバリュエーションに基づく売買は行わないことにしているためであろう。
株価の割高・割安は売買の基準にはならないのだ。
投資対象から外れるのは、「構造的に強靭な企業」と認められなくなった時しかない。

このようにユニークな運用がどのような成果を収めるのか、興味は尽きない。
その評価には、少なくとも5年以上の期間を要するだろう。
なにしろ、売る必要のない会社しか買わないわけだから、目線は最初から超長期なのである・・・。

投資信託

Posted by Uranus