投資と投機の違い

投資のヒント

株式投資とギャンブルの違いを説明する際に、「株式投資は“投機”ではなくて“投資”である」という言い方がされる場合がある。
ところが、投資と投機の定義が論者によってバラバラであるために、議論が噛み合わないこともよく見かける。
投機と投資はどう違うのだろう?

この点について、筆者が現在読んでいる書籍の中に興味深い記述があったのでご紹介したい。
その書籍とは、農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)の常務取締役兼最高投資責任者である奥野一成氏が書いた「教養としての投資」(ダイヤモンド社)である。

NVIC社には、当サイトに掲載した「役に立つ投信の月次レポート」の中でも少し触れたことがある。
「構造的に強靭な企業」に対する長期厳選投資を基本方針とし、優れた実績を残している運用会社である。
奥野氏はそのリーダーというべき人だ。

奥野氏の「教養としての投資」は、タイトルからもわかるように、一般のビジネスマンを含めた幅広い読者層を対象にした啓蒙書である。
「投資家の思想」が日本を救う、というテーマのもとに、奥野氏の洞察が披瀝されている。

その《4時限目》の文章が、「『投資』と『投機』は違う」だ。
奥野氏は、農地の比喩を使って、投資と投機の違いをわかりやすく説明してくれる。

もし、自分が農地を持つとしたら、どのようにして収益を得ようとするか?
多くの人はそこに適切な作物の苗を植え、育て、収穫し、販売することでお金を得ることを考えるだろう。
これが「投資」の考え方である。

ところが、こういう考え方をする人もいる。
農地の今の地価が低ければ買い集めておき、値段が上がったところで売却し、その差額で儲けよう。
これが「投機」の考え方だ。

農業という継続的なビジネスを成功させることを考えるのが「投資」。
農地の価格の値上がりで収益を上げることを考えるのが「投機」。

この農地の部分を株式に変えると、株式における投資と投機の違いが見えてくるという。
投資=その企業が行っている事業から、どれだけの利益を得られるかを考えて株式を買う
投機=その株式を買うことで、どれだけの値上がり益を得られるかを考えて株式を買う

別の個所では、投資することは他人に働いてもらい、事業上の稼ぎを得るということだという表現も出てくる。
日本電産の株式に投資するということは、同社のCEOである永守重信氏及び同社の社員を部下にしているのと同じなのだという。
日本では額に汗して働くことが美徳とされ、他人を使って稼ぎを得ることは白眼視されることもある。
しかし、投資家の思想が日本社会に乏しいことが、日本企業の低迷につながっていると奥野氏は憂えている。

「そんなことを言ったら、たいていの投資家は投機目的で株を買っていることになるじゃないか!」と思う人がいらっしゃるだろう。
そのとおり、日本では圧倒的に投機目的の株式投資が多いように感じる、と奥野氏は書いている。
なぜか日本では、事業内容よりも株価が上がるかどうかにしか関心がない個人投資家も多い。

もちろん、奥野氏は投機目的で株式を購入することを否定しているのではない。
「投機」も立派な経済行為である。
しかし、長期的な視点で事業に投資するという考え方が乏しいために、株式投資に負のイメージをもつ日本人が多いのではないか、と奥野氏は危惧しているのだ。

筆者は、これと見込んだ株式銘柄はできるだけ長期保有したいと考えているので、奥野氏の考え方に共感する部分が非常に多い。
長期的な事業収益力をベースにした銘柄選択の考え方を学ぶべく、NVIC社の運用する投資信託は継続的にウォッチしていきたいと考えている。

Posted by Uranus