コロナ禍で厳しさが増したコンビニ業界

業績

コンビニエンスストアは、これまで小売業界の勝ち組だった。
100円コーヒーなど次々と新しい商品を開発し、宅配便の発送・受取、住民票発行、チケット販売など多様なサービスを取り込んで、今や都市生活に不可欠なインフラとなった。
一人暮らしの人などは、コンビニなしの生活なんぞ考えられないだろう。

コロナで明暗を分けるコンビニと食品スーパー

しかし、今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響は、コンビニの経営に暗い影を落としている。
既存店の前年同月比売上高は、今年3月以降マイナスが続いているのだ。
来店客数の減少が顕著なためで、緊急事態宣言が出ていた4、5月には前年より2割近く減少している。
まとめ買いや買いだめがあるので、客単価は上昇しているのだが、売上高減少をカバーできてはいない。

そんなコンビニとは対照的に、地域住民の買い物場所として来店客が多い、食品スーパーは好調である。
コンビニと入れ替わるように、コロナの影響が本格化した2月以降、売上高の前年比大幅アップが続いている。

店舗増での成長は限界が近づいている!?

なぜ、生活インフラとして定着したはずのコンビニが不調なのか?
その理由の一つは、コンビニの店舗がビジネス街や繁華街にも多く存在することにあるようだ。

近年、コンビニの飽和状態が言われるようになり、店舗数は頭打ちになってきている。
2019年は、統計を取り始めて以来初めて前年比減少を示した。

住宅街では出店の適地が乏しくなり、チェーン間の競争激化や同一チェーン内の店舗間のカニバリゼーションが目立ち始めた。
そこで、ここ数年、コンビニ各社はビジネス街、繁華街、観光地等人が集まる場所への出店を強化し、なんとか成長を維持してきた側面があった。

今回は、それが裏目に出たということだろう。

さらに、24時間営業をめぐるフランチャイズ本部と加盟店の対立表面化、本部指導員による無断発注の発覚、廃棄ロスの負担問題など、コンビニのビジネスモデルに綻びが目立ち始めた。
そこへコロナ禍が襲いかかってきたのである。

個々の加盟店の経営が成り立たなくなっては、元も子もない。
各チェーンとも、今期は積極的な出店戦略は控え、不採算店の立て直しや加盟店への支援強化に乗り出さざるを得なくなっている。

セブン・イレブンは善戦、しかし先行き不透明感は強い

コンビニ三大チェーンの前年同月比売上高動向をみると、売上高の落ち込みが大きいのがファミリーマートとローソンである。
緊急事態宣言発令中には10%を超えるマイナスを示していた。
その後は徐々に回復傾向にあるものの、依然としてマイナス圏にある。

セブン・イレブンは、他2社に比べて影響を小さくとどめている印象がある。
2020年度上半期の1店舗当たりの平均販売日額は、セブン・イレブン64.1万円(前期比1.8万円減)、ファミリーマート48.8万円(同5.2万減)、ローソン48.5万円(同5.8万円減)となっており、減少幅を最低に食い止めている(川村力「コンビニ大手3社『コロナ決算』明暗分かれる」 BUSINESS INSIDER 2020.10.9付)とのことだ。

これについては、冷凍食品や総菜を増やすなど柔軟な商品戦略が効を奏した(日経電子版2020.7.10「コンビニ3社の6月既存店 セブンが増収で一人勝ち」)ことや、新レイアウトを導入して、まとめ買いを誘発しやすくなったことが一因(「コロナ禍でもやはり強い!コンビニの王者セブンが善戦できている理由」DIAMOND Chain Store 2020.10.12付)などの観測がなされている。

もっとも、ビジネス街はテレワークの普及で人出の減少傾向が続くとみられ、繁華街や観光地もコロナ感染拡大の第3波到来で来店客数の回復は遅れそうだ。
住宅街での需要についても、食品スーパー、ドラッグストアなどとの競合が、さらに激しくなっていくことが予想される。

果たして、コンビニはビジネスモデル再構築を同時に進めながら、コロナ禍を乗り越えていくことができるのか?
セブン・イレブンも含め、コンビニにとって厳しい環境は当分変わりそうにない。