割安高配当株に投資する

投資のヒント

大暴落した株価は3月に底値をつけた後、予想もしなかったスピードで回復しつつある。
ただ、株価の回復度合いについては、銘柄によってずいぶん差があるようだ。
人気銘柄と不人気銘柄の格差が、以前よりもいっそう際立つようになったように感じられる。

特徴的なことは、不人気銘柄の中に優良企業として長年評価されてきた大企業が多く含まれていることである。

その代表格が、銀行株だ。
三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクはいずれもPBRが0.5倍を下回っている。
つまり、株価が解散価値の半分にも及ばないということだ。
2021年3月期の予想配当利回りは、3社とも年5%台。
さすがに、評価が低すぎないか?

確かに、ゼロ金利の長期化は貸し出し利ザヤを縮小させ、銀行の収益力を確実に低下させている。
地銀など中小金融機関の苦境については、メディアでたびたび取り上げられるとおりだ。

だが、3メガバンクについても同じような評価でよいのか?
この点について、楽天証券の窪田真之氏が、メガバンクに対する市場の評価は極端に低すぎるとレポートに書いている(トウシル掲載配当利回り5.3%!三菱UFJの投資価値を見直す」)。
詳細は上記レポートをお読みいただきたいが、同氏が「三菱UFJの収益力は正しく理解されていない」と主張されていることには、強く共感する部分がある。
私が銀行界出身だから肩を持つわけではないが、ゼロ金利の影響やフィンテックへの対応の遅れが過度に強調されるあまり、世間は大手銀行の底力を見くびっていると日頃感じているからだ。

フィンテックが金融の姿を変えつつあることは間違いない。
しかし、すぐに銀行が不要になる事態は起こらないし、銀行経営自体も変化を続けている。
コロナ禍の影響があってもなお、5000億円を超える純利益を上げることのできる企業のPBRが0.5倍以下というのは、やはりおかしい。

市場の評価が極端に低いのはメガバンクだけではない。
総合商社、保険会社、リース会社なども、現状、高配当なのに割安で放置されているケースが多くみられる。
三菱商事、第一生命、オリックスなど錚々たる会社がPBR1倍に満たない状況が続いているのだ。
少し前まで日本産業の牽引車だった自動車メーカーも、同様にPBRが低い。

これらの従来型の大企業には将来の飛躍的成長の可能性が乏しいから、バリュエーションが低いのだという見方もあるだろう。
確かに、これらの大企業の売上高が今後10倍になるかといえば、すぐに実現する可能性は低いと思う。
それが株価にも反映されていると言われれば、そのとおりなのだろう。

だが、配当を重視する投資スタンスをとる場合、株価は激しく上下するよりも、むしろ安定的に推移してくれたほうが望ましい。
値上がり益よりも、配当を長期に渡って受け取っていくことが最重要だからだ。
何よりも困るのは、減配されたり、無配になったりすることである。
そうした観点から言えば、キャッシュフローが安定している企業で高配当であれば、投資対象としては最適だ。

個人投資家は値上がり益を追う思考が強いように感じる。
しかし、老後に備えた資産形成ということであれば、たとえ年4%程度であっても、配当を少しずつ積み上げていくという選択肢も有力だと思う。
メガバンクや保険会社のように、日本を代表する企業が割安高配当株としてゴロゴロある現状は、長期投資には大きなチャンスともいえる。

三菱UFJ

Posted by Uranus