高PER株のタイプ分けをしてみた
PER(株価収益率)は、株価の割高・割安を測る指標だと一般的には言われる。
他方で、PERは銘柄の人気のバロメーターだ、という人もいる。
業種によってPERの水準は異なるし、同じ業種でもPERに差があることは珍しくない。
PERが高い銘柄が、なぜそうなっているのかを考えてみると、どうやら要因は一つではないように思える。
そこで、高PER株のタイプ分けを試みてみた。
「高成長」タイプ
これは一番分かりやすい。
売上高・利益とも毎年二桁以上の成長率を続けていて、急速に事業規模が拡大している企業は、高PER銘柄になりやすい。
成長率が高いということは、たとえ現時点のPERが高水準にあったとしても、来年、再来年と利益が増大することでPERがどんどん低くなってくる。
つまり、一見割高のように見えていても、時間の経過とともに適正な水準に落ち着いていくことになる。
言い換えれば、将来の成長を織り込んだ株価が形成されているために、高PER銘柄になっているわけだ。
実績の裏付けがあるので、成長を確実視する人が多いということでもある。
それだけに、成長が鈍化する兆しが見え始めると、株価が急落するリスクがあることには注意すべきだ。
織り込んだはずの成長が実は幻だった、という失望が生まれ、わずかな成長率低下でも過敏に反応しやすい。
「期待先行」タイプ
いわゆるテーマ株やバイオ関連株、新規上場直後の銘柄などによく見られるタイプである。
今なら、人工知能やら自動運転とかに関連するといえば投資家の人気が集まる現象は、よくみる光景である。
期待で株価が上がっている点では上記「高成長」タイプと似ているが、違いは実績の裏付けがまだ乏しいことだ。
中には、営業利益が辛うじて黒字になった程度にも関わらず、高PERになっているケースもある。
期待が剥がれ落ちれば、あっという間に株価が半分以下ということも珍しくない。
初心者は手を出さないほうが無難であろう。
「株主優待」タイプ
株主優待は海外ではあまり見られない制度だが、日本株の場合、株価に影響を与える要因として無視できない。
優待株を好んで買う人が多いことは、マネー雑誌が優待に関する記事をほとんど毎号掲載することからも明らかだ。
どの優待がおトクかについて特集が組まれ、優待投資メインのブロガーが得意げにオススメ銘柄を紹介している。
優待情報はまたたく間に広がり、人気の優待銘柄ともなると、PERが30倍、40倍なんてザラである。
優待銘柄の業績があまり良好ではない状況であっても、株価は下がりにくく、PERが高止まりしていることもよくある。
マクドナルドが数年前に業績悪化したときも、優待人気のためか、株価の下落は限定的だった。
一方で、優待が改悪(株主優待の本質からみて、この言い方は適切ではないと私は考えているが)された場合、株価が大きく崩れるきっかけになる可能性がある。
業績とは別の要因で株価が大きく動くということは、念頭に置いておくべきだろう。
「業績安定」タイプ
業績の変動が緩やかで、安定的に利益を上げ続けられる企業も、PERが比較的高くなりやすい傾向がある。
例えば、花王が典型的な事例だ。
Yahoo!ファイナンスによると、2020年3月期の予想経常利益(コンセンサス)は前期比4.7%増ということなので、とりたてて高成長ではない。
しかし、同社の2019年末のPERは27倍。
同じく予想経常利益の前年比が22.2%増になるトヨタ自動車のPERが10倍だということからすると、高水準であることは明らかだ。
両社の違いは何かといえば、花王の事業はトヨタよりも景気変動の影響を受けにくく、安定した業績を見込めるからということだろう。
要するに、投資家が安心して保有していられる銘柄はPERが高くなりやすい、ということである。
そういう趣旨からすると、定期収入が得られるストック型のビジネスモデルを確立している企業も、高PER銘柄になりやすいと考えられる。
「利益急減」タイプ
これは、これまでとは性格が大きく異なるタイプである。
会社が予想利益を下方修正した直後などに、PERが高くなってしまったケースが典型的だ。
その場合は、業績予想の変化を株価がまだ十分に織り込めていない、と考えることができる。
その後どうなるかに関しては、2つのパターンがある。
1つ目は、株価が下落して、本来の水準のPERに収れんしていくパターン。
2つ目は、株価があまり下落せず、高いPERのまま推移していくパターン。
1つ目は通常のパターンで、業績の変動を素直に反映した形になる。
では、2つ目がなぜ起こりうるかというと、業績の変動が一時的だと判断される場合があるからだ。
例えば、災害、事故、不祥事などで特別損失を計上する場合、今期の利益は減ってしまうが、来期には特別損失が消えて元の水準に戻ることが期待される。
であれば、慌てて株式を売却する必要はないので、株価も下がりにくいというわけである。
もちろん、来期以降も利益が減ったままになることが明らかになれば、株価の下落は不可避となりPERも低下するだろう。
このあたりは、その企業の経営者に対する投資家の信頼度合いも関係してくる話だ。
上記の5つのタイプはあくまで筆者が思いついた典型例であり、これ以外にも別のタイプがあるかもしれない。
いずれにせよ、PERが高い企業への投資を検討する場合には、なぜ高PERが許容されているのかを自分なりに考察しておくことが、方針の決定やリスクを明らかにする助けになると思う。