現金決済にもコストがかかる

雑記帳

筆者は、この1、2年の間で現金を使う機会が激減した。
銀行のATMでお金を下ろしたのは、もう半年以上前だ。
理由はもちろん、キャッシュレス決済中心の生活に切り替えたからである。

かつてはスーパー、コンビニ、飲食店等の小口支払いに現金を使っていたが、それをやめてから随分楽になった。
お釣りを考えて小銭を使う必要もないし、使用履歴が残るから、メモを残す必要もない。
家計簿アプリを利用しているので、アプリの提携機関の決済であれば、自動的に家計簿に記録される。
今月何に出費をしたか、1円単位で把握することが可能だ。

一度この便利さを経験してしまうと、現金中心の生活にはもう戻れないだろう。

キャッシュレス決済普及は国家的課題に

キャッシュレス決済は、筆者だけでなく、社会全体で浸透しつつある。
消費者庁の意識調査(2020年12月調査)によれば、キャッシュレス決済を「よく利用している」という人の割合は58.9%に達しており、「ときどき利用している」という人を合わせればほぼ9割にもなる。

一方、利用金額をベースにしたキャッシュレス決済の比率(民間最終消費支出に占める割合)は、経済産業省の推計によれば、2019年で26.8%である。
2010年が13.2%だったので、この10年間でほぼ2倍になった。

もっとも、世界でみると我が国はキャッシュレス決済比率が未だ低い国で、お隣の韓国などは90%を超えている。
主要国で日本よりも低いのはドイツくらいだ。

政府は、大阪万博が開催される2025年の6月までに、キャッシュレス決済の比率を40%まで上昇させることを目標として掲げている。
その目的は、消費者の利便性向上、決済データの利活用、インバウンド消費の拡大、マネーロンダリング対策など様々なことが挙げられている。
そのため、マイナポイントなどの普及策を講じており、給与支払いにキャッシュレス決済サービスを利用できるようにする検討も始めている。

もちろん、キャッシュレス決済には弱点もある。
各種の調査でも、セキュリティ対策への不安は常に上位に挙がるし、実際に大規模な不正利用事件が何度か起こった。
また、災害時に利用が困難になる可能性が現状では大きい。
中小事業者にとっては、コスト負担が大きく、導入のメリットが少ないことも指摘される。

万全ではないものの、キャッシュレス決済の利便性は高い。
世界の趨勢からみても、キャッシュレス化の流れが滞ることはないだろう。
日本だけが世界から取り残される前に、何とか円滑にキャッシュレス社会に移行していくことが必要なのだ。

とはいえ、日本人の現金信仰は根強い。
自動販売機が外に置いてあっても安全で、偽札が少なく、ATMが至るところにあり、すぐに現金を補充することができる日本社会は、現金で決済することに格別に問題を感じてこなかった。

現金払いは割高になる!?

これをコストという視点からみれば、現金を使うためのコストを意識することが少ない社会だった、ということができるのではないか。
実際には、現金利用の維持にはコストが掛かっているのに、それを負担する必要がないと利用者は思ってきた。

ATMで現金を下ろせるようにするためには、現金を準備し、運搬し、補充するコストがかかる。
当然、今は銀行がそのコストを負担しているわけだが、銀行経営が厳しくなってきた昨今、利用者に一部の負担を求める銀行が出てきても不思議ではない。
時間外利用手数料がかかるのは今や普通だが、今後は営業時間内であっても、利用手数料を取られることになるかもしれない。

一般の小売店でも、現金決済についてはコストが掛かっている。
お釣りを十分に用意しておく必要があるし、レジでのお金の受け渡しに人手や時間を使っている。
勘定の締め作業にも人手や時間がかかる。
火事による焼失、従業員による横領、盗難・紛失のリスクなども、対策を考えておく必要があるだろう。
こうしたコストを総合的に考えれば、必ずしも「キャッシュレス決済よりも現金決済のほうが低コスト」とは限らない。

キャッシュレス決済の普及が進めば、現金決済にかかるコストは、今まで以上に意識されるようになると考えられる。
現金利用者が減るにつれて、利用者一人あたりのコストも大きくなる。
事業者側が負担の軽減を図るため、現金利用者へのコストの転嫁を進める可能性は大きい。
「現金お断り」という店は我が国ではほとんどないが、キャッシュレス決済先進国では普通に多数存在するようだ。

これまでは現金特価で安くなるのが普通だったが、キャッシュレス社会では、現金決済こそ割高な価格ということになるかもしれない。

消費者にとってのお金の管理コスト

消費者だって、実は現金の管理にはコストを掛けている。
お金を下ろすためにATMまで出向くのは、時間というコストを掛けていることにほかならない。
レシートを保存して家計簿に記録するための手間も同様だ。
そもそも、財布を購入して現金を持ち歩くことも、紛失や盗難のリスクを考えれば、コストの一端だといえる。

キャッシュレス決済に拒否感を示す人は、その理由として「お金を使っている感覚がせず、使いすぎてしまう」ことを挙げる人が多い。
しかし、筆者には、これはキャッシュレス決済の問題ではなく、その人のお金の管理能力の問題にしか見えない。
要は、預金残高のみのドンブリ勘定で日々を過ごしていて、何にどれだけお金を使ったのかをきちんと把握していないだけではないか。
そんな人が、現金払いだから無駄遣いをしていないとは、到底思えない。

先に触れたように、キャッシュレス決済は家計簿アプリと相性が良い。
記録が残るので転記しやすいうえに、うまくすれば自動的に記入までしてくれるからだ。

筆者の経験からしても、現金こそ記入漏れが発生しやすく、管理が大変である。
現金の残高が合わなくても、何が漏れているかの見当がつかないことがしばしばある。
管理コストは、キャッシュレス決済のほうが圧倒的に低いのだ。

本当に無駄遣いをなくしたいなら、すぐにでもキャッシュレス決済中心の生活に切り替えて、お金の管理をしっかり行うことをオススメする。

Posted by Uranus