私が考える優良企業の条件
何をもって優良企業というかは、評価する人が置かれている立場で変わる。
従業員の立場からすれば、やりがいのある仕事があり、高い給与を支払ってもらえ、十分な休暇を取れる企業こそ優良企業だろう。
顧客の立場からすれば、良い製品・サービスを低価格で提供してくれる企業が、やはり一番だろうか。
投資家の立場からすれば、企業価値を高め、株価を上昇させてくれる企業だという人が多いのではないか。
私は個人投資家なので、基本的には企業価値を高めてくれる企業が優良企業だと考えている。
ただし、長期投資を基本としているので、短期的な株価の上昇はそれほど気にしない。
むしろ、配当を安定して出し続けられること、そして配当額を増やし続けていくことが重要だと考えている。
そのような企業選びには、次の4つの条件から考えることが多い。
①持続的に業績を向上させていること
②高収益な事業であること
③堅固な財務基盤を持つこと
④株主・投資家を大切にする経営姿勢を持つこと
以下に、具体的な留意点を記述してみる。
持続的に業績を向上させていること
業績の向上とは、売上高と利益額の拡大であることは言うまでもない。
ただ、特需やブームによって、売上高や利益額が一時的に急増するだけではダメである。
「持続的に」というところが大切だ。
毎年必ず売上や利益が増加する必要はないが、10年タームくらいでみて増加基調であることを確認したい。
なお、本業以外で利益を上げている場合もあるので、営業キャッシュフローが増加していることも重要である。
最終的に配当につながるのは、キャッシュにほかならないからだ。
もちろん、業種や企業の発展段階によっては、営業キャッシュフローが赤字であることも必ずしも悪いことではないが、許容できる理由が明確であることが条件となる。
高収益な事業であること
業種によって高収益の水準が違ってくるのはもちろんだが、一般的に売上高営業利益率が10%以上なら高収益だと評価できることが多い。
さらに、総資産利益率(ROA)も10%以上あれば、資産効率の面でもよい事業をしていることがわかる。
ただし、多額のキャッシュ(現預金)を保有している場合、ROAが低くなってしまうことに注意する必要がある。
事業自体は高収益なのに、キャッシュが貯まりすぎたために、隠されてしまうことになるからだ。
そんなときは、事業用資産(運転資本+固定資産)だけを取り出して利益率を計算してみるのがよいだろう。
堅固な財務基盤を持つこと
基本的には、自己資本比率で概ね40%以上もあれば問題はない。
キャッシュを潤沢に保有しているなら、「リーマンショック級の経済危機が到来しても大丈夫」という安心感につながる。
ただ、あまりにキャッシュを貯め込んでいるのは、経営資源の効率的な利用面から問題があるので、経営姿勢に疑問符がつくことになる。
ほどほどのキャッシュというさじ加減に、経営者の優劣が現れる。
営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いたフリーキャッシュフローが黒字であることも、重要な要素だ。
フリーキャッシュフローがほとんど毎期黒字であることは、基本的にキャッシュを貯めやすい事業体質を示している。
借金に頼らなくても、自己で投資資金を確保できるということでもある。
株主・投資家を大切にする経営姿勢を持つこと
どんなに素晴らしい業績を上げている企業でも、株主・投資家を蔑ろにする企業は信頼できない。
リスクを負って自社に資金を出してくれる人々を疎かにするということは、学費を出してくれた親戚のおじさんに冷淡に接するのに等しい恩知らずな行為だ。
もちろん、上場企業であれば、大抵の場合、ホームページや企業紹介資料に「株主を重視します」とは書いてある。
しかし、口先だけでなく本当にそれを実践しているのか、注意深く観察することが重要である。
残念ながら、最小限の経営情報しか開示していない企業は珍しくない。
前年比〇〇パーセントの伸びでした、などは誰でも数字を見ればわかる話だ。
ところが、堂々とそれしか書いてない有価証券報告書がなんと多いことか!
こちらが知りたいのは、なぜこの伸びになったのか、何が良かった(悪かった)のか、などの要因なのだ。
本当に株主を大事にしている企業は、そうした説明を決しておろそかにはしない。
また、意味もなくキャッシュを貯め込み、いっこうに株主に還元しようとしない企業も相手にすべきではない。
高成長でもないのに低い配当性向は、優良企業として失格だと考えている。