業績悪化もどこ吹く風?経営実態が見えない会社クックパッド

業績

「とうとう、そうなってしまったか…」
クックパッドが海外子会社で人員削減をする、という報道に接した率直な感想である。

当サイトでは3年近く前にクックパッドを取り上げたことがある(理想の追求は吉となるか?~クックパッド(ビジネスモデルが躓くとき-その2)。

その際に、現在のクックパッドは「創業者佐野氏が抱く『世界一のレシピサービス運営企業になる』という夢と理想に共感できる人のみが参加できる企業」と評した。
大株主の権限で意に沿わない後継社長を追い出し、株主への配当もストップし、ひたすら夢の実現に邁進する姿が、およそ上場企業らしからぬものに感じたからだ。

あれからクックパッドはどうなったのか、詳しくみる機会はなかった。
久しぶりにチェックしてみたところ、人員削減のニュースを知ったのだった。

有料会員減少で、2期連続の営業赤字に

この3年間のクックパッドは、業績が低迷して苦境が続いている。
売上高は2016/12期をピークに減収が続き、直近2期は大幅な営業赤字を出した。
ビジネスモデルを高く評価され、成長株の代表格としてもてはやされていた面影は、もはやどこにもない。

減収が続いているにも関わらず、クックパッドは販管費を増やしてきた。
国内の新規事業や海外市場の開拓のために、人材の確保など投資を継続しているためである。
当然、赤字幅は拡大することになった。

減収の原因ははっきりしている。
売上高の根幹となるプレミアムサービス会員(有料会員)売上が減少傾向にあるためだ。

200万人前後で推移していたプレミアム会員数が、2021/12期に入って減少に歯止めがかからなくなり、直近では170万人を割り込む水準に落ち込んでいる。
急速に、消費者の「クックパッド離れ」が進んでいることは明らかだ。

その背景には、料理動画の台頭があることは想像に難くない。
当サイト3年前の記事でも、料理動画がクックパッドを脅かす可能性について、クックパッド自身は影響を否定し、強気でいることを紹介していた。
だが、それはどうやら間違いだったようだ。
共働きが当たり前で料理に時短が必要とされる昨今、クックパッドでレシピをじっくり見ながら料理するユーザー層は減っているのだろう。

ビジネスモデルの屋台骨が揺らいでいる。

キャッシュフローも悪化

事態が深刻なのは、クックパッドが重視すると公言してきたキャッシュフローが悪化していることである。

これまで利益を減らしても悠然と構えていられたのは、営業キャッシュフローは十分稼げていたからであった。
継続して資金を稼げる基盤があればこそ、夢に向かっての投資に邁進できた。

それが、直近2期は営業キャッシュフローがマイナスに転落してしまった。
当然、現預金残高も少し減少している。

いまだ総資産の約9割が現預金という特異なバランスシートをもつため、クックパッドに経営危機はない。
とはいえ、経営がこのままでいいとも思えない。

さすがにコスト削減に動かないとまずい、と考えたのであろう、希望退職の募集と海外子会社での人員削減に踏み切ったのが、今回の報道の背景のようだ。

投資家に背を向ける経営

筆者がこの会社最大の問題と考えているのが、一般投資家と向き合う姿勢である。

これだけ業績が悪化しているにもかかわらず、経営陣が責任を問われるどころか、株主に対する謝罪や反省の弁もほとんどない。

2022/12期決算説明会資料では、29枚のスライドのうち、決算の数字に関連する説明は12枚だけである。
始めの16枚はOur missionの説明が延々と続く。
どうやって業績を立て直すのかという施策に関する説明もない。

新規投資を控えればいつでも黒字にできる、ということで、経営再建プランなど必要ないと考えているのかもしれない。

創業者佐野氏の夢である「世界一のレシピサービス運営企業」実現のため、投資優先で無配を続けているわけであるが、それがどこまで進捗しているのかもさっぱりわからない。
2019/12期決算説明会資料までにはあった海外事業の説明が、2020/12期以降は非開示になってしまったからである。
これでは、投資家に対してまともに経営説明をする気がない、と言われても仕方ないだろう。

クックパッドは、上場企業とは名ばかりで、実態は佐野氏の個人商店なのである。

佐野氏が大株主である以上、経営方針が変わることは今後もないだろうから、筆者がこの会社に関心をもつことは、たぶんもうないだろう。

クックパッド

Posted by Uranus