意外な副業(その2)~セーラー万年筆

ビジネスモデル

時折、上場企業が本業とあまり関係がありそうにない意外な事業を営んでいる事実を発見することがある。
そんな事例をご紹介するこのシリーズ、2回目はセーラー万年筆株式会社を取り上げる。

筆記具メーカーがロボットをつくっている!?

セーラー万年筆といえば、1911年に初の国産万年筆の製造を始めた老舗文具メーカーであり、パイロット、プラチナと並ぶ国産万年筆3大ブランドとして有名な会社だ。

そんな同社が産業用ロボットをつくっている、と聞いたら、驚く人も多いのではないか?

その歴史は意外と古く、1969年に射出成形品自動取出装置の製造販売を開始し、1982年にはロボット機器事業部ができて以来、青梅工場を拠点として事業活動を展開している。

同社は、万年筆やボールペンの製造に際して、射出成形機を使用してプラスチック部品を生産していた。
かつては射出成形機1台に1人の作業員がつき、成形部品を型外に取り出す作業を24時間3交代で行っていた。
1967年からこの作業の改善のため射出成形品自動取出装置の開発に着手し、1969年試作機が完成した。
これを外販したのが、ロボット機器事業の始まりというわけだ。

言われてみれば、「なるほど、だから産業用ロボットか」と納得できる。

現在では、主力製品である射出成形品自動取出装置のほかに、オーダーメイドで自動化装置を受注している。

同社によれば、カセットテープ、ビデオカセットの組立、CDの取出し、PC、スマートフォン等、常に時代が求める自動化装置を作り続けてきた、とのことだ。

2020/12期有価証券報告書によると、グループ従業員数198人のうち、81人がロボット機器事業に従事している。
文具事業では2019/12期より従業員数が大幅に減った(理由は後述)ため、ロボット機器事業のウェイトが高まっている。

セグメント業績は改善

ロボット機器事業の業績を確認してみよう。

直近2020/12期では、売上高15.7億円で会社全体のほぼ3分の1を占める。
ここ数期の売上高は横ばいだが、利益面では改善傾向にある。

会社から詳しい説明はないが、医療器具業界に射出成形品自動取出装置を売り込んでいるとの情報があるので、利益の改善はコロナ対策に関連しているのかもしれない。

もっとも、本業である文具事業がここ3期大幅な赤字に陥っており、ロボット機器事業の利益ではとてもカバーしきれない状況が続いている。

業務提携など新しい動き

実は、セーラー万年筆は長期にわたって業績不振が続いている。

2012/12期から2020/12期までの9期で、経常利益が黒字だったのはたった2期にすぎない。

国内では、デジタル化の進展とともに文具市場の縮小傾向が顕著になっていたところに、コロナ禍による在宅勤務や学校の休校がさらに追い打ちをかけた格好だ。

赤字によって自己資本が乏しくなり、上場の維持も危うくなっていたため、2018年にプラス株式会社との業務・資本提携に踏み切り、2020年には新株予約権付社債を第三者割当発行し、セーラー万年筆は事実上プラス社の傘下に入った。

文具事業の従業員数が減少したのは、プラス社が設立したプラットフォームカンパニー「コーラス株式会社」に、国内文具営業の業務を委託し、63名の社員をコーラス社に出向させるなどしていたためだった。

ロボット機器事業においても、セーラー万年筆と同様に産業用ロボットを外販している文具メーカーぺんてる株式会社と業務提携したことを2020年7月発表した。

ぺんてるもまた、プラス社が出資している企業なので、提携の背景にはプラス社の仲介があったのかもしれない。

業務提携がどのようなメリットをもたらすのかはまだ不透明だが、営業活動面の協業はもちろん、共同開発、事業統合など踏み込んだ動きが今後見られるのか注目される。