個別業績の二極化と中長期投資

投資のヒント

先週で2020年4~6月期の決算発表が峠を超えた。
8月7日時点で、3月期決算企業1,417社(新興・子会社上場など除く)の業績は売上高が19%減、純利益が68%減になった模様だ。
新型コロナウィルス感染症拡大による緊急事態宣言があった期間のため、ある程度予想できたことであったが、3分の1近い企業が赤字になった事実はやはり衝撃である。
経済活動が大幅に制限され、外出もままならない環境では、いたしかたないように思える。

ところが、個別企業の業績に目をやると、事態はそう単純ではないことが見えてくる。
日経新聞電子版の8月5日公開「巣ごもり需要で41社最高益 4~6月、パソコンなど」では、41社が4~6月期に最高益を上げたことを報じている。
その多くは、新型コロナウィルスによる生活様式の変化から生まれた需要を取り込むことができた企業だ。
例えば、在宅勤務で需要が急増したパソコンなどの情報機器やインターネット環境整備、あるいはゲーム、電子書籍、ネット通販など「巣ごもり消費」と関連する商品・サービスが代表的である。

それ以外でも、家庭で消費する食品や衛生用品関連、5G需要が見込まれる半導体関連、ITを利用してビジネスを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)関連などで堅調な業績を上げている企業が多い。

日経新聞の企業業績記事を毎日眺めていても、たしかに減益・赤字の報道が全体的に多い印象ではあるのだが、ちらほらと増益の報道も目につく。
前掲図でも、増益企業が赤字企業と同じくらいの数であるから、決して少なくはないのだろう。

こうした個別業績の二極化は、当然、株価にも反映している。
決算発表で業績の良かった企業の株価はさらに上がり、芳しくない企業の株価は大きく下がることが珍しくない光景となっている。
いっこうにコロナの感染拡大に収束の兆しがない現状では、こうした相場はしばらく続きそうだ。

業績を素直に反映しているといえばその通りなのだが、業績良好企業の株は、かなり割高になってしまっても、どんどん買われ続けているのが少し不気味に感じる。
そもそも業績が良かったといっても、それが一時的な要因なのか、中長期的な要因なのかは意識しておいたほうがいいのではないか?

5GやDX、あるいはIoTなどは中長期的技術潮流として数年来注目されていたが、コロナ禍でさらに変化が加速することが意識されている。
そういった意味では、息の長い需要があるといってよく、株価の上昇は来年以降も続く見通しが立てやすい。

一方、、再び緊急事態宣言が発令されることになれば別だが、「巣ごもり消費」がいつまでも続くという保証はないだろう。
一度買ってしまえば、しばらく購入する必要のない商品・サービスも当然ある。
さらに、賃金の伸び悩みや残業代の減少などで家計収入が今後減少するという予想もあり、消費が抑制されてしまう懸念がある。

特需で業績が急伸したものの、10月以降に反動減に見舞われる企業もないとはいえない。
そうなれば、株価は急落するのが過去の習いであり、高水準の株価で飛びついた人は大やけどすることになりかねない。

デイトレードのような短期志向の投資家は別として、じっくり腰を据えて中長期で投資したい人は、目先の株価動向に左右されず、その企業のビジネスの中身を吟味することに注力したい。
決算内容が良好だった場合も、あるいは悪化した場合も、果たしてその業績はコロナ禍による一時的なものなのか、それとも来年以降も継続するものなのかを見極める姿勢が大切だと思う。

たとえ現在の業績が低迷していても、しっかりとした経営方針があって未来に向けた投資が積極的に行われている場合には、必ずしも悲観する必要はない。
成功のチャンスは、今は冴えない企業に潜んでいるかもしれない。

Posted by Uranus