USS(中古車オークション運営)
株式会社ユー・エス・エス(USS)は、中古車業界では誰もが知る企業だ。
業者間で中古車を売買するオークションの運営企業で、自動車メーカー系列に属さない独立系ながら、業界全体の出品台数の約40%を取り扱う圧倒的な存在だからである。
新車販売の際に下取りされたり、ユーザーから売却されたりした中古車は、そのまま同じ店舗で売られることは少なく、その多くはオークションで売買され、別の中古車販売業者によって新たなユーザーに売られる。
また、日本の中古車は品質が良いことが国際的に有名なため、海外でも需要が大きい。
そのため、オークションには中古車輸出業者や海外バイヤーが多数参加している。
中古車の流通において、オークションは根幹をなすインフラと言っていい。
そのトップ企業としてUSSは揺るぎない地位を築くとともに、成長を続けている。

出所:USS「2024年度決算説明資料」
屈指の高収益企業、コロナ禍以降は業績さらに伸長
まずは、業績の推移を確認してみよう。

2020/3期までのUSSは、売上高・営業利益とも増減はありつつも、安定した業績をあげている。
2018/3期に売上高が大きく増加しているが、これは同業のJAAを完全子会社化(のち吸収合併)したためである。
2021年にはHAA神戸を吸収合併し、さらに規模を拡大した。
2021/3期はコロナ禍の影響で減収となったものの、それ以降は増収増益が続き、好調な業績が継続している
特筆すべきはその営業利益率で、元々40%台後半と高水準だった上に、コロナ禍後は50%を上回る水準まで上昇している。
東証プライム上場企業全体でみても上位10位に入る、屈指の高収益企業なのだ。
USSの事業は主として、①オートオークション、②中古車買取販売(チェーン名「ラビット」)、リサイクル(廃自動車やプラント処分)の3つがあるが、売上高の78%、営業利益の98%がオートオークション事業によるものだ。
営業利益率が高いのは、オートオークション事業が60%超という高水準にあるからである。

中古車買取販売やリサイクルは、中古車流通のプロセス全体に関わってオートオークション事業を補完することが目的で、業者や消費者向けの金融事業を近年始めたことも、その一環のようだ。
オートオークション事業の特徴
USS主催の中古車オークションに参加するためには、まずUSSの会員資格を得ることが必要である。
会員資格を持たない事業者や個人は、資格を保有する代行業者に依頼して参加することになる。
会員資格には、オークション会場に実際に入場できる現車会員、インターネットで会場外から入札に参加できるCIS会員、衛星TVを通じた専用端末で入札に参加できるUSS JAPAN会員の3種がある。
現車会員でないと、後の2つの資格に申請することができないので、基本的にまず現車会員の資格を取得しなければならない。
現車会員の入会審査は、業界で最も厳しいことで知られる。
他社のオークションに参加資格を持つ事業者でも、USSの入会審査に落ちることは珍しくないそうだ。
そのせいか、現車会員数はおおむね横ばいで推移している。

オークション事業からUSSに入る収入は、出品手数料・成約手数料・落札手数料の3種類の手数料が基本となる。
出品手数料と成約手数料は出品者が、落札手数料は落札者が負担する。
これらの手数料はいずれも会場ごとに決められ、落札額によって変動しない固定金額である(1万円の高額車両加算などはある)。
なお、現車会場外からの落札手数料は、場内に比べて高く設定されている。
推移をみると、落札手数料の伸びが大きく、ここ数年の売上高が大きく伸びた原動力であることがわかる。
これは、落札手数料金額を段階的に値上げしたこと、および会場外からの落札件数が増えていることによるものと考えられる。

USSのオートオークションの特徴は、出品台数が多いだけでなく、成約する車両金額が大きいことも特徴だ。
なんと、市場平均の2倍近い水準である。
高額取引がUSSに集中しているということを示すもので、当社のオークションの魅力をいっそう高めることにつながっている。

出所:USS「2024年度決算説明資料」
中古車オークションは泥臭い事業
「これほど儲かる事業であるなら、他業界から新規参入があるのではないか」という疑問を持たれた読者もいらっしゃるのではないだろうか?
より使い勝手のよいオークションのシステムを開発できるIT企業なら、USSに対抗できそうにも思える。
結論から言えば、他業界から中古車オークションに新規参入することは大変難しい。
なぜなら、中古車オークションは一筋縄ではいかない業界だからだ。
中古車業界に詳しくない者からすれば、オークションといえばヤフーオークションを思い浮かべる人が多いだろう。
あるいは、中古品の売買からメルカリを連想する人もいるだろう。
これらは中古品の取引プラットホームを提供するサービスであり、ヤフーやメルカリはあくまで場を提供するだけだ。
もちろん、盗難品のような違法なものを出品することは禁じられているが、基本的に取引の内容自体は当事者に委ねられている。
ヤフーやメルカリが商品を預かることもない。
ところが、中古車オークションでは運営者が現車会場を設置し、実際に取引対象の車両を見せて取引が行われる。
運営者は、出品前に出品車両を預かり、それを駐車しておき、当日には順番が来たら搬入、レーン内を移動、搬出することが必要である。
中古車は何十万、何百万円で取引される高額品だから、ちょっとした瑕疵でも金額に大きく影響する。
だから実物を見て取引したい参加者が多いのだ。
さらに、業界特有の問題として、メーターの改ざんや事故修復歴の隠蔽などにより品質をごまかし、相場よりも高く売りつけようとする悪質行為が存在する。
このような悪質行為を排除できないと、オークション自体の信頼性が低下し、参加者が集まらないことにつながる。
USSは創業以来、公正・公平なオークション市場を提供することを企業理念として掲げてきた。
それを実現するために、自社独自の車両検査員制度をつくり、資格をもつ社員が出品車両全部を厳正にチェックし、レポートにまとめて買い手に情報提供している。
検査員数はUSSの正社員の4割強にものぼる。
また、早くから競りにコンピューターを導入して取引の透明性を高め、一部の有力業者が優遇されることを排している。
現車会員の入会審査が非常に厳しいことは前述したが、これも悪質な業者が紛れ込むのを防ぐためと考えられる。
これらのおかげで、オークション参加者は安心して取引ができるようになっている。
泥臭い取り組みを長年やってきたことにより、それまで不正が横行し、不透明だった中古車オークション取引を変えた。
それが、USSが後発・独立系ながら業界ナンバー1になることができた大きな要因だといえるだろう。
中古車オークションは装置産業
先に触れたように現車会場を設置するわけだが、そのためには駐車スペースを含めた広い土地と、会場設備の建設が必須だ。
USSは全国19会場を運営しているから、固定資産の規模は相当に大きくなる。
出品台数を大幅に増やすためには、会場のキャパシティを拡大しなければならず、建て替えなどの設備投資が必要だ。
もちろん、オークションのシステム高度化への継続的な投資も欠かせない。
会場外からの落札が増えたのは、高画質な出品車両画像を提供できるようになったことが貢献している。
つまり、中古車オークションは“装置産業”として性格が強い事業なのである。
バランスシート(B/S)をみれば、そのことがはっきり現れている。
現預金を除けば、有形固定資産が資産の大半を占めるのだ。

新規参入者がこれだけの設備をいきなり揃えることは、まず無理だろう。
これも新規参入が難しい一因である。
ネットワーク効果(ネットワーク外部性)による優位
USSの牙城を突き崩すのが容易ではない要因が、もう一つある。
それは、ネットワーク効果(ネットワーク外部性)が働いていることである。
ネットワーク効果とは、サービスや製品の利用者が増えるほど、利用者にとっての便益が向上して、さらに多くの新規利用者を引き寄せる現象を指す言葉だ。
例えば、メルカリが色々と批判を受けながらも、フリマ市場としての人気が揺るがないのは、このネットワーク効果が強く働いているからである。
オークション事業で最も大事なことは、多くの出品があり、落札も活発に行われることである。
そのためには、参加者ができるだけ多いほうがよい。
あなたが出品者であったなら、落札の可能性が少ないオークションよりも多いオークションを選びたい、と考えるはずだ。
逆に落札を狙っている場合でも、出品物が少ないオークションよりも多いオークションのほうが選択肢が豊富にあるから好ましい、と考えるだろう。
つまり、同種の中で参加者数が最も多いオークションに参加することが、自分にとって最も便益が大きいということである。
USSはまさにその状態にある
メルカリの例をみてもわかるように、これは強力な参入障壁になる。
USSと同等の取引規模と信頼性を獲得して、なおかつ手数料が安いなど明確に有利なファクターが生じないかぎり、USSはトップでありつづけるだろう。
電気自動車普及もビジネスチャンスか!?
ここまでみてきたように、USSは強い競争優位を築くことに成功している。
危機があるとすれば、中古車の流通が激減するなど市場環境に大きな変化が生じたときであろう。
自動車業界で今起こっている大きな環境変化といえば、ガソリン車から電気自動車へのシフト、自動運転技術の進歩などを挙げることができるが、それらがすぐに中古車を減らすことにつながるとは考えにくい。
むしろ、旧型車から新型車への買い替えによって、下取りなどで中古車の流通量が増える可能性がある。
USSも、電気自動車の普及は今後の大きなビジネスチャンスと捉えているようだ(個人投資家向け会社説明会での瀬田社長の発言)。
目下の中長期経営目標は、オートオークションの市場シェア50%達成を目指して推進する戦略プロジェクト「シェア50」の実現である。
新規会員の獲得強化と、既存会員への業務支援のためのデジタルプラットフォームの構築を進めていく方針を掲げている。
最後に、長期的な株式投資において、USSは見逃せないメリットをもっている企業であることに触れておこう。
そのメリットとは、配当金を長期にわたって増配していることだ。
2026/3期で26期連続、なんと四半世紀以上にわたり増配している。
高収益で手元現預金は潤沢、主力事業の競争優位性も高いことから、増配は当分続くことが期待できそうだ。
年々、取得原価比の配当利回りが上昇していくわけで、筆者はその点が気に入って長年保有している。

出所:USS INVESTER’S GUIDE 46th
ちなみに、ギフト券などの株主優待もあるので、優待投資に興味がある個人投資家も候補にできそうな銘柄だ。










