リオンがもつ別の顔~微粒子計測器

別の顔シリーズ

リオン株式会社は、補聴器の国内トップメーカーとして知られる。

設立は戦時中の1944年と古く、軍需の音波探知機の生産から始まり、1948年に量産型補聴器の開発に成功し製造販売を開始した。
「リオネット」というブランド名で国内の販売・サポート網を構築している。

補聴器以外では、耳鼻科で使用される聴力検査機器でもトップシェアをもつ。
補聴器と検査機器を合わせた医療機器事業が、長らくリオンの主力事業で、現在でも最も大きい売上高規模の事業セグメントである。

半導体業界に欠かせない“微粒子計測器”を製造

補聴器のイメージが強いリオンだが、利益の稼ぎ頭は別の事業だということは、投資家にも意外に知られていないように思う。
少し前から微粒子計測器事業が、営業利益の半分以上を稼ぎ出しているのだ。

微粒子計測器(パーティクルカウンター)とは、大気中や液中の微小な粒子を計測する装置で、チリなどの不純物がどれくらい混ざっているかを調べる目的で使われる。

例えば、医薬品や食料品などの製造過程で、バクテリアやウイルスが浮遊粒子に付着して混入するのを防ぐためには、清浄度の測定が欠かせない。

最大の需要者は半導体関連企業で、クリーンルームや電子デバイス製造のプロセスにおける清浄度管理に活躍している。

リオンが微粒子計測器を扱い始めたのは、なんと50年近くも前だ。
1977年に気中微粒子計の製造販売を開始し、84年には日本初の液中微粒子計を発売している。

しかし、鳴かず飛ばずの時期が長く、一時は撤退の議論も社内で行われたことがあったという(日経電子版2026.4.6掲載記事)。

それが、この数年で急速に収益性が高まり、稼ぎ頭にのし上がったのだから、世の中何が起こるか本当にわからない。

主役交代が起こっていた!

事業セグメント別に売上高と事業利益をみていこう。

微粒子計測器が環境機器事業から分離して、独立した事業セグメントになったのは2020/3期からである。
現在の事業セグメントでのデータが追える2019/3期以降の売上高の推移は、下図のとおりである

新型コロナウイルスの影響を甚大に受けた2021/3期でも、微粒子計測器事業は増収で、以後順調に売上高を伸ばしていることがわかる。
従来の主力事業である医療機器事業との差はぐんぐん縮まっている。

では、セグメント利益の推移はどうか。

こちらは完全に微粒子計測器事業が主役だ。
2020/3期以外は微粒子計測器がトップで、しかもそのほとんどで過半を占めている。

リオンが2024/3期の決算説明資料から、微粒子計測器事業を先頭に表記するようになったのも、この実態を踏まえたものだったのだ。

直近2026/3期は微粒子計測器事業が増収減益となったが、リオンの説明によると、生産能力の増強や研究開発投資で費用が増加したためだという。
AIブームを背景に半導体需要は世界的に旺盛なので、中長期の観点から戦略的投資を敢行したということのようだ。

ずば抜けた高利益率だが、変動は激しい?

売上高と利益の動向からうかがえるのは、微粒子計測器事業の利益率がずば抜けて高いことである。
2026/3期の数値で利益率を計算すると、医療機器9.7%、環境機器12.2%に対し、微粒子計測器は24.6%にも達する。

前述したように、26/3期は費用増により減益だったわけだから、微粒子計測器事業本来の利益率はもっと高いと推測される。

今後、微粒子計測器事業の売上高ウェイトが高まっていけば、全体の売上高営業利益率も急上昇していくことになるだろう。
もっと投資を集中するべき、という意見も強まるかもしれない。

ただ、半導体業界は需要・供給バランスの変化が激しい業界である。
AIブームで湧く活況は当分続くだろうが、いつ半導体不況が訪れるかは、誰にも予想がつかない。

以前の味の素の記事でも触れたが、利益率が高いからといって依存しすぎれば、業績の変動も大きくなることは避けられない。

それにリオンの各事業セグメントは、毎期の利益変動が結構大きいようにみえる。

当分は3つの事業セグメントの最良のバランスを模索しつつ、落ち込んだセグメントを別のセグメントで補える事業構造を維持することがよい選択ではないかと思う。

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