保有株個別の動きを調べてみた

投資のヒント

今月8月5日、日経平均株価は、それまでの下落幅トップであった1987年10月「ブラックマンデー」翌日を超える、過去最大4,451円安の下落幅を記録した。
著名企業を含む約800社がストップ安となる、歴史的な株価暴落だった。
パリ・オリンピックの最中ながら、テレビニュースはどこもその報道がトップで扱われ、呆然とする投資家の姿が映し出されていた。

暴落はバーゲンセール!?

筆者はというと、実はまったく平静であった。
むしろ、「やっと、今年最大のバーゲンセールが来たな」という思いが浮かんだくらいだ。
今回の暴落は何か明白な原因があるものではなく、不安に駆られた投資家のパニック売りであることが明らかだったからだ。
おそらく短期間でかなり値を戻すだろう、と予測していた。

こんなチャンスはそうそうない。
さっそく、保有中の不動産リートや個別株を中心に1百万円ほど買い増した。
予想通り、その翌日から日経平均株価は上昇に転じ、荒い値動きながら回復傾向にある。

賭けはひとまず成功だったようだ。

日経平均の暴落幅は2週間でほぼ回復

7月終わりから2週間ほどの日経平均株価の動きをもう一度振り返ってみよう。
日足のチャートはこんな感じだった。

出典:Yahoo!ファイナンス

7月末に39,000円近辺にあった株価が、8月に入るなり急におかしくなったことがわかる。
たった3営業日で7,643円下落、下落率はほぼ20%になる。

急落のきっかけは日銀の利上げ観測による急速な円高の進行で、そこに米雇用統計で失業率の悪化が明らかとなり、米国の景気後退懸念が急速に高まったことが拍車をかけたと言われている。
2日の下落幅が史上2番目だったこともあり、投資家の不安が高まっていたところに、米国発の市場ショックに追い打ちを受けたわけだ。

市場が売り一色になると、損すると分かっていても、機関投資家はリスク管理上売らざるを得ない状況に追い込まれる。
信用取引を手がける個人投資家も、急激な株価下落で「追い証」が発生する可能性が高まり、半ば強制的に株を売ることを迫られる。
買い手が誰もいなくなってしまった市場では、適正な水準を維持することは不可能で、底が抜けたように株価が下がってしまう。

だが、さすがに短期間にこれだけ値を下げるのは、誰が考えても異常である。
案の定、翌8/6は一転して過去最大の上げ幅3,217円高を記録し、その後も徐々に株価は回復していった。

16日の終値38,063円は、8/1の終値38,126円と同水準になり、2週間ほどで暴落の下げ幅の大半を取り戻した。
ここから先はしばらく、7月までと同じく一進一退が続くことを筆者は予想している。

結果的に、慌てて8/5に持ち株を売った人は、その後の株価回復に乗れなかったケースが多いだろう。
逆に、下がったところで株を買えた人は、今ホクホク顔ではないだろうか。

7/31から8/5にかけての変化率の比較

日経平均株価の動きは以上のようであったが、もっと大事なのは自分の保有株がどう動いたのか、である。
そこで、今後の暴落時にどう対応するかを考える材料にするべく、7/31~8/16の計12営業日における筆者保有株84社の株価推移を追ってみた。

まず7/31終値の株価を基準に、最大の暴落があった8/5にかけての変動をみると、ほぼすべての銘柄が下落している。

唯一の例外が0.5%とわずかながらプラスとなったSHOEIだ。
実は、SHOEIも8/5自体は前営業日比約8%の下落だったのだが、8/1に10%を超える大幅上昇をしていたために、その貯金のおかげで7/31を上回る結果となった。
7/31引け後に2024/9期第3四半期の決算発表があったので、それを材料に8/1に買われたものと思われる。

下落率上位を挙げると、1位が東京海上ホールディングスの▲32.8%、2位がsantec Holdingsの▲31.3%、3位が三菱UFJフィナンシャル・グループの▲28.8%である。
20%以上下落した銘柄は他にもたくさんあるので、こういう暴落時には20~30%の下落率は覚悟しておくことが必要ということだろう。

1位となった東京海上は、昨年から長期にわたって株価の上昇が続いていたので、反動が一気に来てしまった、という感じだ。
三菱UFJやsantecも同様に直近の株価上昇が大きかった銘柄であり、株価が好調な銘柄ほど谷が深くなることがうかがえる。

一方で、蔵王産業、KDDI、システナのように、下落率が▲5%程度で済んだ銘柄もある。
日本マクドナルド、コメダ、伊藤園、NTT、セコムなども、今回の下落率は1ケタだった。

下落率が低い銘柄は、期間中の株価のばらつきが小さい(変動係数が小さい)ものが多いので、値動きが比較的おだやかな性質をもつといえる。
暴落時の株価の変動をできるだけ抑えたい人は、こうした銘柄を中心に保有することを考えるとよいだろう。

8/5から8/16にかけての変化率の比較

今度は、8/5終値を基準に、8/16にかけての株価の変化率をみてみよう。

結果は、全部の銘柄がプラスとなっている。
もし、8/5終値で買っていれば、どの銘柄でも含み益が得られたということである。
ただし、個々の回復度合いには差がある。

上昇率の高い銘柄は、1位東京海上で37.9%、2位santec Holdingsで37.0%、3位アズビルで34.8%、4位トリケミカル研究所で33.6%となる。
いずれも、8/1→8/5の下落率が20%を超えていた銘柄であるから、「本来の価値に対して売られすぎ」だと認識されたということだろうか?

それにしても、東京海上が下落率・上昇率とも1位になったのが予想外だった。
そんな激しい値動きをする銘柄とは思っていなかったからだ。

もちろん、下落率に対して回復が緩慢な銘柄も少なくない。
三菱UFJは上昇率が下落率を上回れず、ジャックスも下落率▲21.2%に対して上昇率はわずか5.7%にとどまっている。
半導体関連株である太陽誘電、アバールデータあたりも冴えない。
期間中に決算発表があって、業績が市場の期待に届かなかったサンフロンティア不動産のような銘柄も、上昇率は低いようだ。

100%回復できた銘柄は少数派だが、ポートフォリオ全体への影響はそれほど大きくなかった

結局、8/16終値で7月末の水準を上回ることができた銘柄は、どれくらいあるのか?
結果は、84社中12社にとどまった。
85%の銘柄は依然としてマイナスの状態である。

2ケタの下落率に沈んでいる銘柄は13社。
これを多いと捉えるか、少ないと捉えるかは人それぞれだろうが、筆者の感覚としては「史上最大の暴落と騒いだわりには、思ったより少ない」である。

時間の経過とともに、7月末を上回る回復銘柄がさらに増えていくのではないだろうか?

むろん、これは筆者の保有株に限った話なので、暴落で大ダメージを受けた方は多くいるだろう。
金利や外国為替の動向、景気動向、地政学リスク、米国の大統領選などによって、今後再び暴落が起こる可能性も否定できない。

とはいえ、ひとまず株式市場のショックは落ち着いたと考えて良さそうだ。

Posted by Uranus