成長株の株価暴落が怖い11-エス・エム・エス
今年は株式市場が活況を呈した一年だった。
日経平均株価は、年初39,945円からしばらく調整していたが、6月以降グングン値上がりして、10月には5万円台を突破した。
その後は少し勢いが弱まった感はあるが、それでも来年も株高を予想する声は多い。
だが、個別の株式銘柄に目を向けてみると、必ずしも順調なわけではないことに気づく。
成長優良株と従来目されていた企業の株価が、長く低迷している事例が多く見られるのだ。
筆者の保有銘柄の中にも、含み損が拡大している銘柄が複数ある。
今回取り上げる株式会社エス・エム・エス(以下、SMS)もその一つである。
成長株から一転、株価長期低迷
SMSは、医療・福祉分野の成長株としてクローズアップされてきた企業である。
主力事業は、看護職や介護職など医療・福祉分野に特化した人材紹介サービス、介護事業者向けの経営支援プラットフォーム「カイポケ」の運営、海外でのメディカルプラットフォーム事業、の3つである。
売上高構成でみると、人材紹介サービスの「キャリア分野」が60%、介護事業者向け経営支援の「介護・障害者福祉事業者分野」が20%、海外分野が15%となる。
キャリア分野の内訳は、介護キャリアが32%、医療キャリアが28%と拮抗している。
高齢化社会を迎えた我が国で、医療・福祉分野は最も重要な市場の一つであることは、誰もが認めるところだろう。
その分野を主戦場とし、人材紹介サービスではトップクラスのシェアをもつSMSに対する投資家からの期待が大きいことも頷ける。
当然、SMSの株価は長らく上昇トレンドを続けていた。
ところが、2023年に入ってから株価は下降トレンドに転じ、今に至るまでズルズルと下げ続けている。
直近3年間の週末株価推移(2022年12月19日週起点)2175.T=SMS
出所:Yahoo!ファイナンス
この3年間で株価は60%も下落し、日経平均株価とはまったく対照的な動きになっている。
もはや、成長株の輝きは消えてしまった。
いったい、何が要因なのだろうか?
直近期は減益になっていた
普通に考えて、業績が悪化しているのではないか、という推測がまず浮かぶだろう。
さっそく、損益計算書(P/L)をみてみよう。
やはり、増収増益が長く続いていた状況から、一転して直近の2025/3期は増収ながら大幅減益となっていて、成長路線にブレーキが掛かっている。
決算前の2025年1月末には利益予想の下方修正を発表して、一日で一気に400円も株安となってしまった。
減益についての会社側の説明によれば、キャリアパートナーの積極採用や広告宣伝投資で販管費が膨らんだことが減益の要因だとしている。
医療分野での働き方改革が進んだ影響で、求職者の転職意欲が減退したこと、数が減った求職者の獲得競争が激化したため、売上が思ったほど伸びていないことも一因だという。
確かに、コロナ禍下では抑制されていた給料手当や広告宣伝費が、コロナ後に一気に増加している。
それに見合った増収が達成できないと、固定費が重荷となって、2025/3期のような減益になってしまうリスクが大きくなったのだ。
ただ、株価下落が始まったのは2023年だから、増収増益が続いていた2024/3期中でも株価は下がっていた。
別の要因もありそうだ。
成長力に陰りが見えて人気が急低下!?
2023年以降、成長株としてのSMSの評価に陰りが見え始めたことが原因ではないか、という仮説を筆者は立てている。
それは、2024/3期に利益が会社の期初計画の数値を下回る事態が起こったからだ。
わずかながら達成率が100%をクリアできず、今後の成長が継続するのか疑問を抱いた投資家が増えたのではないか?
そこへ減益が追い打ちを掛け、すっかり失望してしまったということだろう。
2023年初め、SMSの株価は予想PERが50倍近い水準であった。
そもそも、高成長を織り込んで、株価は既にかなり割高だったのである。
出所:SBI証券サイト
何かのきっかけで、株価が急落する懸念はあった。
そこへ「計画達成に苦戦」という情報が出れば、投資家が次々と利益確定に走ることは想像がつく。
予想PERの下がり方が、SMS株への期待が薄れてしまったことを如実に物語っている。
かつての50倍が現在はほぼ16倍、東証プライム銘柄の平均値18倍よりも低くなってしまった。
成長株から普通の株になってしまったのである。
成長株から転落してしまった株式銘柄が、再び成長株に復帰することは非常に難しい。
よほどの好材料がないと投資家の注目を集めることはないので、株価は当分横ばいが続くとみられる。
“高齢化社会のインフラ企業”というポジションは不変
しかし、SMSの現状をみれば悲観することばかりではない。
まず、業績は回復傾向にある。
2026/3期の上半期では、営業利益が前期比23%増の4,391百万円、通期期初計画7,287百万円に対して60%の進捗率である。
キャリア分野では市場環境がやや改善し、介護・障害者福祉事業者分野のカイポケの会員数も順調に増加しているようだ。
海外分野が不振という懸念材料はあるものの、計画達成は十分期待できるだろう。
看護職や介護職の人手不足はすぐには解決できない問題だし、高齢化社会における医療・福祉分野の市場ニーズはこの先も変わらない。
この分野の重要なインフラを担うSMSのポジションは、依然として高い。
目覚ましい高成長は難しくとも、安定成長を期待できる企業だと言っていいと思う。
中期目標で連結配当性向30%及び累進配当を表明しているので、株主還元も今後期待できるだろう。
現に、2025/3期は減益にも関わらず、大幅に増配した。
だとすれば、現在の株価水準は少し割安、という評価も可能だ。
今期の実績次第では、株価が上昇トレンドに復帰するかもしれない。